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私 の 本 棚

7月の読了

 幕末の京都における朝廷内の公家と孝明天皇に対し「公武一体」のを支えた「一会桑」。将軍一橋慶喜、会津藩主京都守護職松平容保、桑名藩主京都所司代松平定敬等を中心にして幕末の出来事と人を詳しく著しています。かなり詳しい内容で少し専門的すぎるかも。読みごたえがあり、あまりスピードが上がりませんでした(7/26)

孝明天皇と「一会桑」

家近 良樹 著

文春新書

¥700


 会津若松藩主松平容保が京都守護職を拝命し動乱の京に向かうところから、鳥羽伏見の戦いを経て、戊辰戦争が始まるまでの京における会津藩主従の苦悩の日々を「幕末会津藩往復文書」によって明らかにされます。孝明天皇が如何に会津藩を頼みにし、松平容保を如何に信頼しまた容保も天皇の意に添おうとしたかが描かれています。戊辰戦争に至るまでの会津藩の苦悩が克明に描かれた歴史書です。著者の「奥羽列藩同盟」「敗者の維新史」と合わせて読むと戊辰戦争における会津藩の悲劇と憤怒がよく理解できます。歴史好きな方にお奨め。(7/22)

幕末の会津藩

星  亮一 著

中公新書

¥740


 危機管理3部作です。著者の若かりし頃県警本部から外務省に出向し、香港領事をつとめ、その間の香港騒動やヴェトナム出張中に遭遇したサイゴンテト攻防など、まさに危機管理の実践が著されています。新婚まもないの著者が、まだ海外渡航がまれだった頃、妻子を連れ、香港での様々な大使館の業務を身を粉にして励む様子が描かれています。便宜供与の項では外交費の使われ方がふれられており、昨今の外務省のスキャンダルのもとはこんなところにもあったことが分かりました。後半のサイゴンテト攻防は、まさに息詰まるようなタッチで描かれています。昭和史に興味のある方、これから著者の著述「危機管理3部作」を読もうとする方は1「香港領事 佐々淳行」 2「東大落城」 3「浅間山荘事件」の順で読むと昭和の戦後の時代を時系列的に読めます。(7/16)

香港領事 佐々淳行

佐々 淳行 著

文春文庫

¥476


光の雨  「連合赤軍事件」を死刑制度が廃止された2030年に、元事件の死刑囚であった「玉井潔」によって話をさせる構成になった小説です。「玉井潔」は浅間山荘事件のあと逮捕され死刑判決を受ける。浅間山荘事件に至るまで連合赤軍が長田洋子と森恒夫や坂口弘などの革命指導者によって総括の名の下に14人の同士殺人が行われたことが著されています。昭和とうい同時代を生きた著者の目を通して語られる連合赤軍事件とは何であったのか。2030年に80歳まで生きた元死刑囚と予備校に通う19歳の恋人が、死を迎えるまでに「革命」をおこそうとして生きてきた学生たちの行動と思想の矛盾を最後まで話す「爺さん」の話を聞こうとするストーリーです。事件の起きた1972年、私は高校2年生でした。浅間山荘事件とその後に判明した同士殺人事件に戦慄を覚えたことが蘇ってきました。何が原因で、どういう時代背景で当時の学生が学生運動を展開していたのを知りたいと思っていました。昭和の「政治の季節」を理解するのに、これまで読んだ本は開高健「ベトナム戦記」佐々淳行「東大落城」佐々淳行「浅間山荘事件」久能靖「浅間山荘事件の真実」そして立松和平「光の雨」です。そしてその中の唯一の小説です。(7/14)

光の雨

立松 和平 著

新潮文庫

\781


どぶネズミ  暗くてすえた匂いのする下水道を住処にするドブネズミ。復讐代行屋の社長英二は、スタッフ兼愛人のホステスや、異常性格者の元小学校教師、女を貢がせるだけのものとしか考えないホストを使い、依頼人の代わりにに復讐を仕事にする。人の一番大切な物を破壊して満足感を得る異常性格者たち。金以外愛情を示さない英二の前に唯一愛情を捧げる姉の情報を持って現れた父は、ヤクザから金を盗み追われる身。その姉は父から逃れるためヤクザの情婦になっている。あまりにもすごい復讐の手口に嫌悪感を覚えるような内容が続きます。未経験の悪の世界を疑似体験するようなすごい小説です。(7/6)
溝 鼠 新堂 冬樹 著 徳間書店 \1,800


浅間山荘事件の真実  浅間山荘事件は佐々淳行著の「浅間山荘事件」が原作となった映画「突入せよ」が放映中ですが、著者は当時日本テレビのアナウンサーとして現場から映像と音声を送った報道人としての目で事件を語っています。特に人質救出後、人質となった女性が病室で行った記者会見での発言が誤解を呼び、それ以後この女性事件に付いて一切発言をしなくなってしまったことや、事件後犯人たちの自供により16人にも及ぶ「リンチ殺人事件」の凄惨な状況が明らかになったことや、その後おきたダッカハイジャック事件により犯人たちの要求により「超法規的措置」で釈放された犯人板東国雄と、これを拒否した坂口弘の様子など、が描かれています。特に後半部分は連合赤軍が追いつめられていく様子が詳しく描かれています。浅間山荘事件は現在の記者が取材をしてレポートすると言った現在の報道のスタイルの「原点」だそうです。(7/2)

浅間山荘事件の真実

久能 靖 著

河出文庫

¥600


江戸っ子だってね  久しく聞くことのなくなった浪曲。浪花節とも言います。かつて浪曲が全国を席巻していた頃、「次郎長伝」は虎造節といわれ、森の石松の名せりふ「バカは死ななきゃなおらねー」が流行語となりました。日本独特の話芸 落語、講談と並ぶ浪曲ですが、大道芸とさげすまれていた浪曲が廣沢虎造の出現により3大話芸としてその地位を確立しましたが、虎造の死後彼を超える浪曲師は現れず、また時代の波にのれなかった浪曲は衰退の途をたどります。明治大正昭和と破天荒な一代を生きた浪曲師「広澤虎造」伝です。(7/1)

江戸っ子だってね

浪曲師廣沢虎造一代

吉川 潮 著

新潮文庫

¥590


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