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私 の 本 棚

11月の読了

 「忠臣蔵」を戦闘ととらえた「四七人の刺客」や寺坂吉衛門の脱名は大石の命にによる情報戦とした「四七人目の浪士」などの著者池宮彰一朗のエッセイ集。「義」という字は「我」に「美」と書きます。日本人の「義」について語るエッセイです。六〇代で脚本家から小説家になった著者の映画に対する想いや太平洋戦争当時満州に滞在した経験から、旧日本陸軍をみる目など日本人が持つ義について氏独自の考えが格調高い文章によって著されています。(11/25)

義 我を美しく

池宮 彰一郎 著

新潮文庫

\420


 直木賞受賞作品「鉄道員」と同時期に書かれた短編集です。霞町物語や砂高楼奇譚の様に一つのシチュエーションでな、くそれぞれに完結する物語です。全編を流れるテーマはは「男と女の愛の形」。表題作以外にもパリで別れた似顔絵かきの恋人と20年後にクリスマスの夜に再会する「聖夜の肖像」や、対立する組の手打ちのおかげでどちらの組からもあしざまに扱われるヤクザとその女との三角関係を描く「銀色の雨」など、別れた母親を訪ねイタリアまで尋ね、ミケランジェロの彫刻の意外な意味に含まれる話の「ピエタ」など、どれも珠玉の短編集です。(11/23)

月のしずく

浅田 次郎 著

文春文書

\514


 江戸時代の漂流民を描いた中編小説「島抜け」。大阪の講釈士は大阪夏の陣、冬の陣を豊臣方から描いた講釈を語った罪で八丈島に遠島の刑を言い渡される。島で小舟に乗って釣りにをしていたところ仲間に誘われ偶発的に「島抜け」をして漂流の後中国にたどり着く。そして長崎に向かう舟に乗り日本に戻ってくる。その後とらえられるまでの漂流民を題材にした時代小説です。短編「欠けた椀」「梅の刺青」の2編。大飢饉による飢餓の様子が描かれています。藁まで食べた極限の飢餓の様子が生々しく心を揺すぶられるようでした。「梅の刺青」江戸末期から明治にかけて日本における「解剖」について書かれた短編。日本初の解剖から自ら望んで死後解剖をうけた遊女のことなどが史実に沿って書かれています。3編とも読みやすくなおかつ充実していて読みごたえの有る作品集でした。(11/15)

島抜け

吉村 昭 著

新潮文庫

¥438


 よど号事件当時、日本航空の対策本部にいた著者の事件全貌を再現した回想録。一旦は犯人の要求通り38度線を越え北朝鮮領空に入ったよど号が、無線通信の誘導により、韓国領内の金浦空港に着陸したのはなぜか。金浦空港では日本赤軍の犯人たちに、平壌空港だと思わせる偽装工作が行われ、北朝鮮の国旗まで建てたのはなぜなのか。犯人側と日本航空、日本政府、韓国政府との北朝鮮に対する認識の違いが、明らかにされています。現在の日本人拉致問題の根幹をなす、金生日の犯罪の原型がここにもあることが、著されています。乗客の中にいたアメリカ人の一人が「CIAのエージェント」であったことが金浦空港着陸の謎を解き明かす鍵であることが初めて明かされています。(11/12)
「よど号事件」三十年目の真実

島田 滋敏 著

草子社

\1.600

 

 「勇気凛々瑠璃の色」シリーズ最終版。週間現代掲載エッセイ集です。41才で直木賞を受賞し、売れっ子作家となるまでの長いあいだのの懊悩と数々の苦行悪行を面白く読ませます。特に好きなのは、10数匹飼っている「猫」の話。拾ってきた真っ白の子猫を甲斐甲斐しく面倒見ていたぶちの雄猫に変わり、ぶらっと入ってきたアメリカンショートヘアーに恋する猫の話のほか、様々な時事の話題を題材に取ったエッセイ。勇気凛々・抱腹絶倒・意味深長なエッセイ集です。(11/10)
勇気凛々瑠璃の色 満天の星

浅田 次郎 著

講談社文庫

¥552

 

 元日本テレビのアナウンサーの著者。昭和45年3月31日におきた、日本で初めてのハイジャック事件日本航空のよど号事件を、福岡の空港から実況した経験を元に、入念な調査を行って著した著書。羽田発福岡行きよど号は、富士山上空で日本赤軍の9人によってハイジャックされる。犯人は北朝鮮平壌に飛ぶことを要求するが、燃料の補給のため福岡空港に降りる。燃料補給の後、平壌に向け飛び立つが、着陸したのは韓国金甫空港であった。誰が支持をしたのか。乗客の身代わりになった政務次官山村新次郎の決死の行動と、平壌についてからの、犯人たちの様子や、簡単な裁判によって乗務員や代議士が帰国したいきさつや更にはよど号そのものも返された謎が、北朝鮮と、中国の関係から明らかにされます。よど号が日本に向け飛び立ったその日は中国の周温来首相が北朝鮮を訪れた日でもあったのです。(11/9)

よど号事件122時間の真実

久能 靖 著

河出書房

\1.600


番 外】落語鑑賞

 ★ 春風亭小朝 独演会   福島テルサFT ホール 14/11/7

出演:林家きくお・林家いっ平・春風亭小朝
林家きくお(二つ目) 演目/新作「生け簀の中の鯛」
林家いっ平 演目/「御血脈」
春風亭小朝(2席) 演目/「豊志賀の死」「源平盛衰記 那須余市」
林家きくお は「木久蔵」の息子、林家いっ平は「三平」の次男、兄はこぶ平、義理の兄に小朝、と林家の落語家{小朝は春風亭だが、小朝の師匠は春風亭柳朝、柳朝の師匠は林家生蔵(後の彦六)です}四題でした。なんと言っても小朝の流れるような語りのテンポと女性の仕草は絶品でした。会場のキャパは473席、9割5分の入りでした。前売り¥3.500


 スーパーマンのようなじーさんの冒険小説。今は無き元映画女優を妻にもつ畳職人のじーさんが、ぼくの初恋の小学校の先生と結婚をする。二人は事業を拡大してゆき日々スキューバダイビングを楽しむ良いご身分。そこへ占い師が現れ、サイパン沖に沈没した舟に財宝が積まれて未発見のままでいることを告げる。さーさーはじまる財宝発見と海賊との戦いのお話。まるで「シルベスター・スターロン」爺さん編みたいな活劇のお話。元気になること請け合いの楽しい小説でした。(11/5)

じーさん武勇伝

竹内 真 著

講談社

¥1700

 

 「吉原」。江戸時代から昭和20年代後半まで続いた公娼制度の郭。現在も東京都台東区千束に一大ソープランドを形成しています。などと言わなくても誰もが知っていますよね。御免状とは許可証のようなもの。徳川家康によって与えられた御免状とはどの様なものであったか。「吉原」は城郭でありさらに公界=自由区=一種の治外法権。大名も武士も町民も農民も吉原の大門をくぐれば身分に差は無かったことなど吉原を新たな角度から解き明かしていきます。徳川家康、天海僧正、明智光秀、八百比丘妃、柳生十兵衛、宮本武蔵,紺屋高尾など歴史上の人物が今までと異なる解釈で登場します。最大の驚きは「徳川家康は関ヶ原で討ち死に、実は影武者であった。」ことからストーリーが展開していきます。時代劇の新たな分野をひらいた作者のデビュー作品。(11/2)

吉原御免状

隆 慶一郎 著

講談社文庫

¥552

 

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