[福島祭り歳時記 作者のページ 私の本棚 このページは私個人の読後感を書いたもので、けして宣伝ではありません。装丁及び価格等のデータは購入時のものであり、現在は異なることもあります]

私 の 本 棚

15年5月の読了

 新撰組副長土方歳三を通じて鳥羽伏見の戦いから函館戦争終結まで戊辰戦争を時系列的に著しています。土方歳三を新撰組局長近藤勇と共に幕府軍に誠を貫いた武士集団としてとらえています。 

 鳥羽伏見の戦いに敗れた新撰組は、江戸城無血開城に反対して上野の山で戦った旗本「彰義隊」に身を投じた者や会津藩の会津戦争で戦った齋籐一や、その後奥羽列藩同盟の崩壊により函館五稜郭の戦いにまで参戦した者といろいろな戊辰戦争を戦ってきました。最後まで新撰組隊士として戦って散っていった隊士達。「士道に背きまじこと」という新撰組局中法度を最後まで貫いた歳三を感動的に描いています。(5/29)

歳三往きてまた

秋山 香乃 著

文芸社

¥1800

 小説すばるの特別読み切り。松蔵の師匠「英二」は胸を患い、療養中。はじめて一人で望む「天切り」の屋敷はなんとあの軍神「元帥」のお屋敷。そして拝借しようとした物は絶対金にならないものであった。軍国日本の波が押し寄せる昭和にさお指す怪盗達。収賄で収監された代議士を相手に語る闇語り。前作の巻頭を飾った「初湯千両」で湯銭を与えた「勲」とその母を15年後の昭和に登場させ、勲の出征にまつわる話を、目細の親分、説教寅、書生常、玄の前お紺、そして天切り松とお馴染みの怪盗たちが活躍する。中でも「天切り松」の「二つ名」の名付け主にはおどろいてしまいます。久しぶりの闇語りに喝采を送りながらもほろりとさせられます。(5/21)

天切り松闇語り

昭和侠盗伝

浅田 次郎 著

小説すばる

¥800

 引きこもり、インターネットメール、金属バット殺人、家庭内暴力、不登校、イペリットガスによる殺人。と現代日本の抱える希望の見えない状況を一人の中学生を通じて描き出したSF小説。
引きこもりを続ける中学生「ウエハラ」はインターネットのホームページで「インターバイオ」のぺージにアクセスする。そこには他人のメールボックスに侵入し、プライバシーを侵害し更には犯罪を犯させるという集団がいた。メールを通じてだけ会話をする「ウエハラ」は次第にこのグループと深く関わり、最後にはイペリットガスによる殺人による殺人を犯す。何とも現代の様々な状況を題材に、インターネットメールがストーリーの展開をさせます。「希望」を必要としていないと著者は言います。希望は現在よりも良くなることをねがうこと。それは前提として現在を正しく把握していること。現代は現代を把握しているでしょうか。(5/17)

共生虫

村上 龍 著

講談社文庫

¥533

 新設された秋田大学医学部に昭和46年合格したの4人をモデルに、6年間の学生生活の後医師国家試験までの間を、著者の体験を元に医学生の青春の日々を描いた小説。創設間もない医学部は田圃のまん中に立ち,校舎も病院もできなく、学生も教授達も都落ちの意識の中にある大学医学部に、開業医を両親に持つ東京出身の学生、高校教師から転身し医師を目指す家庭持ちの学生、新潟の出身で旅館の一人息子で、秋田川反の小料理屋の娘を妊娠させてしまう学生、信州の無医村地区出身の秀才女学生の4人を、医学生の学ぶ解剖実習や、診察の実習、そして卒郷間際に行われる国家試験まで学生生活のことを、秋田の雪深く、そして内陸地方の蒸し暑さのなかですごした青春の日々が、ユーモアーを交えた語り口で著されています。大森一樹監督作品映画「ヒポクラテス達」をイメージさせる青春小説でした。(5/15)

医学生

南木 佳士 著

文春文書

¥447

 幕末に14代将軍家茂に仕えた美気、明治になって横浜で料亭を開いた風気楼の女将お倉、お倉に仕えた会津藩の女子、律。女性3人を通じて明治維新の佐賀の乱から西南の役までの時代をを描いています。時を駆け抜けて行った明治の元勲たちを、料亭の女将として手玉に取るかのようにあしらったお倉、お倉に見そめられやがてはお倉を超える料亭を切り盛りするようになる律、前将軍の寵愛を受けながら、宿下がりにより商家に嫁ぎ、やがてかつての許嫁の男の出征に、維新というは徳川時代への義でなく、明治の御代への義だとして体を張って守る美気。徳川と明治を、時代をかけられた橋にたとえて著者独特の世界が展開されます。(5/6)

明治おんな橋

平山壽三郎 著

講談社文庫

¥667


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